「うん、そうだね。初めての出産は予定日より遅くなるってよく言うし、時々散歩しながらまったりしてるよ」
とは言ったものの……、内心ドキドキしてしょうがない。
いったいどうなっちゃうんだろうって、出産という想像もつかない未知の経験を前にして不安にならないわけがない。
「大丈夫、俺がいる。少しでも体の異変に気付いたらすぐに俺に電話しろ。仕事中でも気にするな。なるべく早く駆けつけるようにするから」
「………うん」
そうだね。
日中は仁さんもいてくれるし、私は1人じゃない。
きっと大丈夫。とにかく落ち着いて今はその時を待つべし。
「無事に産まれてきてくれるといいんだけどなぁ……」
「ああ、俺もそれだけが願いだよ」
顔を合わせながらふっ…と笑う。
そしてやんわりお腹に触れると、私は陽生の肩に寄り添い、祈るような気持ちで瞳を閉じた。



