「ずっとね、実の親から理不尽な暴力を受けてたの」



母はそう言って目を伏せる。


そして思いだすかのようにこう言った。


子供の頃、毎日のように殴られていたこと。


11才から18才までずっと施設に入ってたこと。


施設を出てからは、ひたすら一人で生きてきたこと。


顔を歪め、涙ながらに告げられた母の言葉は苦しそうで、どれも私にとってとても衝撃なものだった。



「だからって、あなたにしたことは決して許されるものではないわ」



苦しそうな母の声。



「本当にごめんね。あなたのお父さんに捨てられてからの私は、もう人生投げやりにしか生きれなかった。何もかもどうなってもいいって……」



その言葉にはっとする。


そして私は恐る恐る聞いてみた。




「お父さんって、どんな人だったの?」



実はずっと気になっていた。


もの心つく頃には、すでにいなくなっていた父。


写真もおろか、今まで一度たりともその姿を見たことがなかったから。