とびっきり甘い時間を過ごし、海岸を出る頃にはすっかり夕日は海の中へと沈んでいた。
ピッタリと寄り添い、車までの道のりをゆっくり歩くと、長い階段を上がった所でふと、陽生が何かに気づいたように立ち止まった。
そして驚いた顔に変わっていく。
「お久しぶりです坊ちゃん。こんな所で会えるなんて奇遇ですね」
「えっ……」
「じ、仁さん!?」
その声に今度は私の方が驚いてしまった。
だって、そこにはなぜかニッコリと微笑む執事の仁さんの姿があったから。
仁さんは以前会った時と同じ、とても紳士的な振る舞いで私達に頭を下げると今度は私の方へと視線を向けてくる。
「三月様もお久しぶりですね。またお会いできて光栄です。もうお体の方はよろしいんですか?」
「え、はい……」
「それはよかった。あれからずっと心配してたんですよ。あの日、お屋敷で倒れられて以来お見舞いにも行けず大変申し訳ございませんでした」