「うん、分かってる」
俯いたままそう言えば「ありがとう」と母の返ってきた声に、また胸がギュッと締めつけられた。
そして熱くなっていく私の瞳…
「もう、体調の方はいいの?」
気を紛らわす様にそう言った瞬間、母が私の手をぎゅっと掴んだ。
「ええ、とても、果歩が来てくれたからなんだか気持ちが嬉しくて、熱なんか一気に下がっちゃったわよ」
思ってもみない言葉に、さらに胸が苦しくなっていく。
瞳にうっすら涙の膜がかかっていくのを感じ、思わず下唇をかみしめた。
「ごめんね、果歩」
そんな私を追い詰めるようにさらに優しい言葉がかけられる。
「今までのこと本当にごめんなさい」
少し震えた声だった。
「言い訳はしない、許してもらおうとも思ってない。最低なことをしたのは分かってる。けどね……」
“これだけは私の遺言だと思って聞いてちょうだい”
そう言って母がそっと手を伸ばし、私の頬に優しく触れた。



