「そ、んな……」
私は信じられない気持で光治さんを見つめた。
だって、まさかあのお父さんがそんなこと……!
「――陽生、これだけは言っておく。真理子さんが自殺したことで一番後悔してるのは他でもない和幸だ。信用できないかもしれないが、それだけは分かってほしい…」
「―――」
その言葉に陽生は一瞬眉をよせ、けれどその後一言も言葉を発することをしなかった。
眉間に皺を寄せ、難しい表情をしたまま、それは光治さんが玄関を出ていった後も終始顔色を崩すことはなくて……
そして私は玄関のカギを閉めた後、少し遠慮がちに陽生の方へ振り返った。
「陽……」
「悪い、少し一人になってもいいか?」
だけど、陽生から向けられたものはそんな言葉。
「ごめんな。ちょっと色々と整理したい。ご飯の用意ができたら呼んでくれたらいいから…」
「……うん」
私は戸惑いながらも頷くしかなった。
正直今は私もその方がいいのかもしれないなって思った、から。
私だって今は何が何だか、こんな気持ちのまま気のきいた言葉なんて一つも思い浮びそうになかったし……



