ちょうどそんな時だった。お母さんが住み込みで働くことになった若い運転手と出会い、そして恋に落ちたのは。
それはなんと2年もの間も続き、陽生のお母さんは最終的にその運転手なしでは生きられない精神状態まで陥ってしまう。
そしてそのことがお父さんにばれて、ものすごい罵倒を受けたお母さんはお風呂場で自殺を…
「今思い返してもやり切れん。あの時のわしは冷酷そのものだったと思う。優しさのかけらも持ち合わせていなかったんじゃ。実際2人が上手くいかなくなった時も「ほら見たことか」と冷たい眼差しを向けて……」」
そうポツリ呟いた光治さんは今にも過去に戻ってやり直したい。そんな後悔で押しつぶされそうな感じだった。
そして私はそんな光治さんの言葉に黙って頷き、ただひたすら耳を傾けることしかできなくて……
とても複雑な気持ちに襲われた。
「わしが大人げなかったんじゃ。最初から真理子さんをちゃんと認めてあげてたら、椎名家の嫁としてちゃんと気遣ってやれてたらきっと今とは違う結末になってに違いないってそう思ってな」
確かに……
それは否定できない、かも。
きっとお母さんの孤独は私達が思うよりはるかに大きなものだったと思う……から。
ただでさえ椎名家の身内にはいい顔をされてなかったお母さん。
聞けば生い立ちのせいで色々とあることないこと陰口をたてられて、精神的にも追い詰められてた……とか。
ましてや血のつながった親や兄弟も側にいない。
頼れるのは陽生のお父さんだけ。
それなのに、そんなお父さんにまで背を向けられたら心がボロボロに壊れてしまうのは当然だ。



