けれど、光治さんはお父さんを勘当まではしなかった。
なぜなら、お父さんは椎名家の大事な一人息子だったから。
他に社長候補になる人もおらず、
ましてや血の繋がらない第三者に会社を継がせるなんてもってのほかだ。
光治さんにとって、お父さんがした行動は決して許されるものではなかったけれど、それでも悔しい思いをなんとか噛み締めて2人の結婚を認めたそうだ。
……だけど、それが全ての間違いだった。
光治さんが会長となり、お父さんが正式に社長としての就任が決まると、当然のように家庭にいる時間が減っていくのは当たり前だ。
仕事に終われ、家に帰ることが少なくなっていく頃には2人の間には深い溝ができていた。
そしてそれはちょうど陽生が中学に上がる頃には深刻さを増していき、だだっ広い家で一人、真理子さんは目に見えて寂しい想いを募らせていった。



