優が差し出したバンドエードをまた、自分の手元に引っ込める。
そしてそれをあっという間に隣の母に渡してしまった。
「はーい、ほら2人共もっとくっついて、笑顔笑顔」
そう言って、私と母の手をグイグイと引っ張る優。
まるで写真撮影か、というテンションに若干引き気味になっていると、隣から落ち着いた母の声が聞こえてきた。
「果歩」
名前を呼ばれ、ビクッと肩を上げる。
チラッと見ると、すぐに柔らかい表情の母と目が合って、ドキンと鼓動が大きくなった。
「手、出して」
優しい口調で言われ、思わず目を泳がせてしまう。
別にこんなことたいしたことでも何でもないはずなのに、まるで体が固まったみたいに動けなくなってしまった。



