「ブラウン、散歩にいこっか」
私は沈みそうになる気持ちを振り切るようにブラウンを呼んだ。
そして一緒に散歩に行って、あっという間に日が沈み、帰って来た陽生と笑いながら再び食事をする。
こんな些細なやり取りが今の私には最高で贅沢な幸せなことのかもしれないって思う。
そして壊したくない。
そんなふうに思いかけた頃、マンションにある来客が現われた。
それは次の日、その人は何の前触れもなくやって来て、仕事から帰って来たばかりの陽生と首を傾けた。
こんな時間に誰だろう…
そう思いながらもモニターを確認すると
「わしだ。夜分遅くにすまない。陽生はおるか?」
そこには見たこともない老人が立っている。
そしてその姿を見た瞬間、私の隣で陽生が驚いた眼差しを向けていた。