好きになった女…


きっとそれは亡くなったお母さんのことを言ってるんだとすぐに気付く。


そしてお父さんに対しての最後の決別の言葉。



「俺はここにいる果歩と温かい家庭を築くから。俺はあんたみたいな寂しい人生だけは送るつもりはない」


「――そうか」



やっと返ってきた言葉。


振り向くことなくそう言ったお父さんに、もうさっきまでの強い怒りは感じられなかった。


だけどやっぱりどことなく無関心。


そして何も話すことはないと言わんばかりに再び素っ気なく歩き出そうとするお父さんに、陽生もあきらめたようにふぅ…と息を吐き



「俺達も行くぞ」



体を抱き寄せられた瞬間、少し切なそうな顔を向けられた私は瞳に涙を溜めたまま何も言えなかった。



「悪かったな」



そんな謝罪に苦しさがひしひしと募る。無言のままかろうじて顔を横に振った私だったけれど



「――っ」



再びズキッと下腹部の痛みを感じて咄嗟に顔を歪ませた私。


前に進もうとした瞬間、今までにない激しい痛みに襲われて思わずその場にうずくまる。