「悪いが、私は諦めんぞ」
出ようとした瞬間、親父の低い声に引き止められる。
「上等だよ、やれるもんならやってみろよ」
絶対あんたらの思い通りにはさせねぇよ!
何があっても果歩だけは譲れねぇ…
「後悔するのはお前だぞ」
「望むところだね。つーか、後悔なんてしねーよ」
俺はあんたとは違う。
嫌味っぽくそう告げて、俺は今度こそ部屋を後にした。
「あ、陽生坊ちゃん」
部屋を出た瞬間、仁さんに呼び止められる。
「どうかなさいました?何かすごい怒鳴り声が聞こえたような気がしたんですが」
「ああ、あのくそ親父とちょっとやり合ってね。それより仁さんにちょっと頼みたいことがあるんだけど、いい?」
「頼みたいこと、ですか?」
「ああ……」
まじ、気に入らねぇ……
あのくそ親父!
俺は心配そうに見つめる仁さんにそう告げて、荒々しく息を吐いた。



