甘い体温②・後編・


「悪いが、私は諦めんぞ」



出ようとした瞬間、親父の低い声に引き止められる。



「上等だよ、やれるもんならやってみろよ」



絶対あんたらの思い通りにはさせねぇよ!


何があっても果歩だけは譲れねぇ…



「後悔するのはお前だぞ」


「望むところだね。つーか、後悔なんてしねーよ」



俺はあんたとは違う。


嫌味っぽくそう告げて、俺は今度こそ部屋を後にした。






「あ、陽生坊ちゃん」



部屋を出た瞬間、仁さんに呼び止められる。



「どうかなさいました?何かすごい怒鳴り声が聞こえたような気がしたんですが」


「ああ、あのくそ親父とちょっとやり合ってね。それより仁さんにちょっと頼みたいことがあるんだけど、いい?」


「頼みたいこと、ですか?」


「ああ……」



まじ、気に入らねぇ……


あのくそ親父!


俺は心配そうに見つめる仁さんにそう告げて、荒々しく息を吐いた。