「悪いが俺はあんたらの都合のいい思惑にのっかかるつもりなんてこれっぽっちもね―よ。しかも今時政略結婚だなんてアホらしい……」
いったいいつの時代だよ。
ばかばかしいのにも程がある!
「俺はそんなくだらないことに協力するつもりはない!やるならあんたらだけで勝手にやってくれ、俺を巻き込むんじゃねーよ!」
そう告げて、俺は親父から背を向ける。
椎名家の向上だとか、将来だとかそんなの俺の知っちゃことじゃない!
そんなくだらないことにつき合わされるなんて、まっぴらごめんだ。
俺は湧きあがる怒りを堪え切れず、乱暴に扉に手をかける。
そのまま勢いよく力任せに飛び出そうとしたその時だった。
「三月果歩さんだったかな」
そう言われ、俺は思わず手を止めた。
「ずいぶんと可愛らしいお嬢さんじゃないか」
「え……」



