一瞬にして気が抜けて、へなへなとその場にしゃがみこんでしまう。
やばっ、また泣きそう。
嬉しいような。だけど悲しいような。何とも言えない感情がグルグルと渦を巻いて、ショックが隠しきれない。
思わず涙が浮かび、慌てて拭おうとした瞬間
「果歩、もう何も考えなくていい」
陽生が同じようにしゃがみ、真剣な表情で私の手を掴んだ。
「もうごちゃごちゃ余計な事は考えるな。お前はただ、素直な気持ちのまま俺のそばにいてくれればそれでいいから」
「でも……」
そっと涙を拭かれても、不安定な心は止まらない。
嬉しい半面、それ以上に複雑に絡まった糸はまだまだ頑なに解けそうにもないし。
それに……
「怒って……ないの?」
「ああ、怒ってるよ。めちゃくちゃにな。だから尚更、お前が責任もって俺の機嫌を直してくれるんだろ?」
「え?」
そう言って私のデニムのポケットに手を伸ばした陽生がなぜかふっと笑う。
そこには、家を飛び出す前に慌ててつっこんださっき見つけたばかりの紙があった。
「もちろん、この右半分にサインしてくれるんだよな?」



