「思ったより、来るの早かったな」
「え……」
もう一度唇に感じた陽生の吐息。
そのままいたずらに下唇を舐められた私は、驚いて目を丸くする。
「陽……」
「ふっ、その顔めっちゃそそられるんだけど」
「へ?」
「嬉しいよ。こんなふうに追いかけてきてくれて。俺のこと引き留めにきてくれたんだろ?」
まるで何もかもを分かったような口振り。
そして……さっきとはガラリと違う穏やかな態度。
私は困惑し、固まったまま身動きがとれなくなってしまう。
「えっと……」
「本当分かりやすいよな。そして面白いぐらいの単純。……ふっ、そんなんだといつか上手い話しにコロッと騙されるんじゃね?」
“さっきの俺みたいに”
陽生がクスクスと笑い、私の手をぎゅっと握る。



