たまらずぎゅっと拳を握りしめた瞬間、突然きつく抱きしめられた。
思わずビックリして、震える体。
「果歩……」
そんな私を見て抱きしめる力がいっそう強まった気がしたけれど……でも、それは一瞬だった。
数秒後、気付けばその手はゆっくりと離れ、耳元に陽生の落ち着いた声が響き落ちた。
「だったら、もうやめようか?」
そして聞こえた陽生の言葉。
まるで子供をあやすような優しいものだったけれど……でも、それはどことなく冷たくて。
「分かった。そんなに俺と一緒にいるのが嫌なら、もうやめよう。このままここで別れよう」
そう言って、私から離れようとする陽生に思わずえっと、耳を疑った。



