「いいか、ここではっきり言っておく!俺は彼女とは結婚はしない。何があってもだ!分かったな!」



ピシャリ、言いきると親父の顔が少しだけ険しくなった気がした。


重ぐるしい空気と嫌な沈黙。


けれど、次に発せられた親父の言葉に、俺の顔はそれ以上に険しいものに変わる。




「悪いが、それはできない」


「何だって?」


「悪いが向こうの親御さんももう乗り気でね。陽生、お前となら是非にと言ってくださってるんだ。……それに、この縁談が決まればうちの椎名グループの株もまたさらに上がるといってもいい。椎名のさらなる発展の向上にも繋がるんだよ」



はっ、株?



「何だよそれ…」


「ミサさんはあの神埼不動産の大事な一人娘なんだ。こんなチャンスは滅多ににないとは思わないか?」