「何だ?何か用かよ?」



しかもこんな夜中に……


まさか、皮肉を言うためだけに来たわけではないだろう。



「ふっ、別に?つーか思ったより元気そうじゃん」



意味深に呟き俺を見据える男。


今まで仕事だったのだろうか?油で薄汚れた作業着がこの薄暗い中でも割とよく見えた。



「あんた今暇?」


「は?」



突拍子もない言葉に思わず顔が歪む。



「何だよ、俺にデートでも申し込もうってのか?」


「アホか。そんなこと死んでもしねーから安心しろよ」



だよな……


自分から言ったセリフにも関わらず、ゾッと鳥肌が立ったようなきがした。



「だったら何の用だ?俺は今忙しいんだよ。悪いがお前に愛想良く構ってる暇なんか……」



チャリン……


突然目の前に出されたシルバー色のキーケース。


それはどう見ても家の鍵で、俺はハッとしたようにそれに向けて目をとめる。



「じゃあ、俺が今からその忙しさを無くしてやるって言ったら?」


「は?」


「あのさ。もうピーピーうるさいから荷物を一つ引き取ってくんない?」



そんな俺を見て一瞬ニヤリとした男……


まるで何もかもお見通しとでも言うような口ぶりで俺を見つめ、ふっと口元を上げた。