へ~……


食事……ね。


人の気も知らないで、なんとも呑気なもんだな。


内心そう思いながらも、俺は仁さんに少しだけ笑顔を見せてまた真顔になる。



「悪い、今日はちょっと急いでるんだ。ゆっくり話したいところだけど、また今度でもいいかな」


「ええ、構いませんよ。分かりました。
それでは私は失礼しますので、何か困ったことがありましたらいつでもお申し立てくださいね」


「ありがとう」



俺はそう告げて、再び奥の書斎へと歩き出す。


見渡せば、昔と何も変わらないインテリアに家具。


それはまさに十数年前の懐かしい光景だったけれど、そんな懐かしさも今の俺には和む、というよりむしろ苛立ちを駆り立てるものしか見えなかった。


一歩、また一歩近づくたび、俺の心が黒く鋭くなっていくのが分かる。





――…コンコン



そんな苛立ちを募らせながらも、俺は躊躇なく書斎のドアをノックする。



「どうぞ」


少し遅れて聞こえた声にイラッとしながらも、俺は重ぐるしいドアをゆっくと開けた。