「先生!」
眉を寄せた彼女が、より強く俺の腕をぎゅっと掴む。
「何で?どうしてそんなに冷静なんですか!?恋人が自分を裏切ってるかもしれないんですよ!?」
「ああ、そうだね」
「そうだねってっ」
冷たく振り切って俺はソファーまで歩み寄った。
――でも、この際ここで彼女と決着を付けるのも案外悪くないかもしれない。
むしろ好都合……か。
そう思った俺は立ち止まり、彼女の鋭い視線を受けながら今度は俺から目の前の瞳に向き直った。
「――それが、本当に果歩の意思……ならね?」
「えっ」
フッと口の端だけ上げると、彼女の動きがピタリと止まる。
俺はそんな彼女にほんの少し顔を近づけて、ほっそりとした指先から携帯をさりげなく奪い取る。



