甘い体温②・後編・


思わず「うん」って頷こうと思ったのに、何故かその時素直に首を縦に振ることができなかった。


陽生の腕に抱かれながら、複雑な感情にもまれ、ただ苦い表情しかできなかった私は



「―――」



咄嗟に俯いてしまった。


だってそれは陽生が言う通り、椎名家を捨てるっていう行為だ。


もちろんお父さんも、それ以外にも病院や静香さん。今目の前にある色んなものから目を逸らさなきゃいけないってことで。

そう思ったら嘘でも生半可な返事はしちゃいけないと思ったから。




「……ごめん。よく、分からないや」


「え?」


「なんでかな?上手く言葉がでてこなくなっちゃった」



そう言って、困った素振りで陽生を見上げた。



だってなんかそれは違うと思うから。


それじゃあまるで今の現状から逃げるようで、どうしても納得がいかなかったんだ。