「それから慌てて救急車を呼んだけど……間に合わなかった。
俺が見つけた時にはもうすでに息はしてなくてさ。それから一度も意識が戻ることもなくそのまま……
本当呆気なかったよ」
ジリジリと蛍光灯の音が物静かに耳に響いてくる。
病院って、こんなに静かだったっけ?
ていうぐらい、会話の合間に感じる暗い不気味さに、鼓動が落ち着きをなくしていくのが分かる。
「……まぁ、その前から様子がおかしかったっていうのは前にも一度話したことはあったよな?」
「あ、うん……」
確かうつだったって。
ずっと調子が悪かったっていうのは私もこの耳にはっきりと覚えてる。
「あれな、本当は不倫の果ての自殺だったんだ」
「えっ?」
「それがお袋の最後の結末ってやつ?実は病気になる前にどうやらその頃うちで働いてた若い運転手と浮気してたみたいなんだよね。
……んでそれがバレて家中大騒ぎになって。もちろん親父は大激怒、自分のことは棚に上げてその運転手をあっさり首にしてさ」
「え?」
「つまり親父も親父で会社の秘書と不倫してたってわけ。おまけに仕事人間な人だったから、ろくに家に帰っても来ない。
普段口数も少ない人だったから、たとえ家にいたところで2人がゆっくり会話してる所なんてあまり見たことなんかなかったよ」



