エレベーターを出て、数メートル走ったところでふいに手首を掴まれた。
「やっ!」
途端気分が悪くなって、たまらずその場にしゃがみこんでしまう。
一気に走ったせいか、目の前が少し歪んで見える。
胸の奥から込み上げてくる気持ち悪さに、私は手を床に付き、こらえきれずゴホゴホと咳き込んでしまう。
「ちょっ、大丈夫!?」
追いかけてきた宮川さんが、そんな私の顔を覗き込む。
肩を抱き寄せられて、振り払おうとしたけれどまったく力が入らなかった。
「少し……落ちきなよ」
あやすように背中を撫でられても、私の怒りはおさまらない。
むしろ強くなる一方で、この気持ちをどうぶつけたらいいのかさえ分からなくなっていた。
「大人なんか嫌い……」
そう投げやりに叫んだ言葉は、きっとこの男には何の意味もない。
そしてこの状況も決して変わることのない、悔しい現実でしかないんだ。



