きっとこの人には感情ってものがないんだ。


世の中は全て自分中心で。


すべて思いのままにできると思ってる。


情けも心情も何もない。


ただ、自分に利益があればそれで……




―――まるで、昔の私を見ているようだ。






「――なに、君なら別に男には不自由しないんじゃないのかね。今までだって散々適当にそうしてきたんだろう?」



もう、その後のお父さんの言葉が上手く耳に入ってこなかった。


ただ、悔しくて……


何もかもが「計算通り」という顔をするお父さんに、私は唇を噛み締めることしかできなかった。



「なんなら、私が君にピッタリの相手を紹介してあげようじゃないか」



扉が閉まり、そんな言葉と共に社長室を出た私。


ふらふらとエレベーターに乗りこもうとした瞬間、私を迎えに来たのは佐渡さんではなく、まったく違う男の人だった。