「酷い……」
「泣きたいなら泣けばいい。我慢することはない。そうやって気が休まるならいくらでも泣くといい、それがきっと君の為でもあるから」
「えっ」
「そのうち分かる日がくるだろう。ここで、今日君が選択したことが正しかったと。そう思える日が必ずくるに違いない」
「そんなの、分かりたくありません」
てか、分かりたくもない。
「なんとでも言いなさい。それでもこの件は進めさせてもらう。君さえいなくなってもらえれば、全てがうまくいくんだから」
「そんなっ……」
「陽生の幸せを思うなら、一秒でも早く陽生の傍から離れてほしい。君から別れを告げてくれるとこちらとしてもありがたい」
お父さんがそう言って背を向ける。
デスクに戻り、内線を取ると運転手の沢渡さんを呼ぶのが聞こえた。