そこまで言って、お父さんが突然立ち上がる。
唖然とする私を置いて自分のデスクに戻り、そして引出しから何かを取り出すと、再び私の向かいに腰を下ろし、こう言った。
「別にただでとは言ってない」
そう言って、机の上にパサっと投げられた茶色い封筒。
目の前に置かれたそれを見た瞬間、私はとてつもなく嫌な予感がした。
「そこに知り合いの病院の紹介状が入ってる」
「えっ?」
……紹介、状?
「そこは日本でも数少ないトップクラスの病院でね。延命治療でも有名な所だから」
私は首を傾ける。
「…延命って、……あのっ」
「お母さん、もう長くはないんだろ?」
「えっ」
「末期のガンだそうじゃないか。あと半年ももつかもたないかの瀬戸際のようじゃないかね」
ガタンと思わずソファーから落っこちそうになった。
何で、それを―――…



