甘い体温②・後編・


そこまで言って、お父さんが突然立ち上がる。


唖然とする私を置いて自分のデスクに戻り、そして引出しから何かを取り出すと、再び私の向かいに腰を下ろし、こう言った。



「別にただでとは言ってない」



そう言って、机の上にパサっと投げられた茶色い封筒。 


目の前に置かれたそれを見た瞬間、私はとてつもなく嫌な予感がした。



「そこに知り合いの病院の紹介状が入ってる」


「えっ?」



……紹介、状?



「そこは日本でも数少ないトップクラスの病院でね。延命治療でも有名な所だから」



私は首を傾ける。



「…延命って、……あのっ」


「お母さん、もう長くはないんだろ?」


「えっ」


「末期のガンだそうじゃないか。あと半年ももつかもたないかの瀬戸際のようじゃないかね」



ガタンと思わずソファーから落っこちそうになった。




何で、それを―――…