甘い体温②・後編・


「本人の気持ちを無視して……ですか?」



私はギュッと拳をつくり、伏せていた瞼を上げた。


お父さんの言いたいことはよく分かった。


今の気持ちも。


社長として、この椎名グループを今以上によくしていきたい思いはよく分かる。


日本でもトップクラスのこの会社。


今まで築きあげてきたものを、この先もずっと守っていきたのもよく分かる話し。

でも……




「陽生の気持ちはどうなるんですか?」



なにか、違う。



「本人が嫌がってるのに、それを無視して勝手に話し進めて、そんなのフェアじゃ……ない」



本人の気持ちは?


社長としては立派な考えだけど、親としてはなんか、違う。


間違ってるとは100%言いきれるものでもないけれど、でも、こんなの……