「本人の気持ちを無視して……ですか?」
私はギュッと拳をつくり、伏せていた瞼を上げた。
お父さんの言いたいことはよく分かった。
今の気持ちも。
社長として、この椎名グループを今以上によくしていきたい思いはよく分かる。
日本でもトップクラスのこの会社。
今まで築きあげてきたものを、この先もずっと守っていきたのもよく分かる話し。
でも……
「陽生の気持ちはどうなるんですか?」
なにか、違う。
「本人が嫌がってるのに、それを無視して勝手に話し進めて、そんなのフェアじゃ……ない」
本人の気持ちは?
社長としては立派な考えだけど、親としてはなんか、違う。
間違ってるとは100%言いきれるものでもないけれど、でも、こんなの……



