そっか、お父さんの言葉を聞きながら目を伏せる私。
うすうすこうなることは分かってたはずなのに、なんて甘ちゃんなんだろう。
反対されてるって知ってたのに、少し口調が和らいだだけで、ホッとして。
きっとどうにかなるって、心のどこかで勝手な期待をしてたんだ。
ほんの少しでも可能性があるんじゃないかって。
ひょっとしたら、今日呼ばれたのだって違う内容のことなんじゃないかって。
私のことを受け入れてくれるんじゃなかって、いい方向に解釈してた。
「ちょうど来年の4月で私も60でね。そろそろ社長の椅子を下りようと思ってるんだが、どうも長男の真咲一人では不安でね」
「………」
「この期にできるなら陽生と2人で、この椎名グループを盛り立ててほしいと思ってるんだが」
「え、でも……」
それを聞いて、私は思わず口をはさむ。



