「佐渡です。三月様をお連れしました」


「入れ」



そう言ってすぐに返ってきた低い声にビクついた私。


緊張がピークに達し、どっと鼓動が激しさを増した瞬間、その目的の姿が視界に映り込んだ。



「あ……」



窓際でうごめく影。


ちょうど向かいの壁全体が窓ガラスになっていて、逆光で鮮明には見えなかったけれど、確かにそこに大きなオーラみたいなのを感じた。



「中へどうぞ」


「あ、はい……」



おじさんに言われ、ぎこちなく前へ進む。


一歩、また一歩進むたびにその姿はしっかりと私の視界の中に映りこんできて、尋常じゃない緊張が押し寄せてくる。






バサッ……



「佐渡、お前はもういい。また時間になったら迎えに来い」



手に持った書類らしきものを机に置いたお父さん。


そしてその視線がゆっくり私に向けられた。