車に乗り込んで30分。
ゆっくり車が止まり、どうやら目的の場所へとついたようだった。
私はそんな状況の中、ずっと緊張した面持ちで携帯を握りしめていて
『陽生ごめん、ちょっと行くところあるから少し遅れるかも』
そう送信すると、それをバッグの中へとぎこちなくしまい込んだ。
ちょうどその時――
ガチャリ、ドアが開いて私は少しだけ体を強張らせた。
「三月様お疲れ様です。どうぞこちらへ」
頭を下げるおじさん。
丁寧に言葉を並べられ、またしても表情が強張ってしまう。
……けど、そんなことはまだほんの徐野口だった。
一歩外に出た瞬間目の前に広がった建物に、私はとんでもなく顔を引きつる羽目になってしまう。