「別に無理なさらなくても大丈夫ですよ」
「だ、大丈夫です!行かせてもらいます!」
少し挑発的に言葉を返した私に、おじさんは何も表情を変えることなくじっとこっちを見つめた。
その視線にやっぱり少しだけビクッと怖さを感じたけれど
「……そうですか。分かりました。それではこちらへどうぞ」
もう一度後部座席のドアを開け、私を丁寧に誘導してくれる。
それに従った私は……
きっと大丈夫、だよね?
車に乗り込む瞬間、陽生がいる病院の方へと目を向けた。
黙って行動しちゃうのは正直後ろ髪惹かれる気分だけれど。
……でも、それでも……
きっとちゃんと話せば分かってもらえる。
だって陽生のお父さんだもん。
ちゃんと話せばきっと……
そんな安易な考えしかなかった私。
この時はまだ、陽生のお父さんの本当の怖さを微塵も分かっていなかった。