ビックリして瞬きをすると運転席から一人、背の高い男の人が現われた。
「三月果歩さんですね」
驚いて目を見開く。
それはぱっと見ると50代ぐらいの年配のおじさん。
おじさんと言っても上下カチッと黒のスーツを見にまとい、髪の毛もしっかりとワックスで整えられていて、とても気品溢れる紳士的な雰囲気だった。
「少しよろしいでしょうか?」
「えっ」
思わずぎょっとすると、目の前の紳士が少し無表情に距離を縮めてくる。
な、なに?何なの?
驚きすぎて一歩後ろに下がった瞬間、少しだけ顔を緩めた紳士が後部座席を開けてこう言った。
「お迎えに参りました」
「えっ」
「旦那様がお待ちです」
そう言ってまた一歩近づき、意味深な笑みを向ける。



