「急にごめんね。こんなことになっちゃって」



果歩が俺の手を上からやんわりと掴む。


ちらっと俺を通り越したその先は、「岩瀬」と表札に書かれた絵に描いたような一軒家。


ここは果歩の母親と優君が暮すマイホームの家の前。



「誠二さん、土曜日には出張から帰ってくるんだろう?」


「みたい、土曜日の夕方って言ってたかな」



その間、果歩が泊まりこみでちょっとした家の手伝いをすることになったのは、つい、2,3日前のこと。


誠二さんからの一本の電話がきっかけだった。



「早奈江さん、調子よくないのか」


「……そうなの、また熱だして寝込んでるって言ってた」


「そっか……」



そのため、果歩が誠二なんの変わりに母親の様子を見ることとなったわけだ。


どうしてもと、誠二さんの強いお願いで。