その夜はもう生きた心地なんかしなかった。
陽生の顔をまともに見ることができず、ましてや隣に座ることなんかもできず。
なるべく自然に、後藤の隣で愛想笑いを浮かべながら注がれたジュースをチビチビと飲むのがやっとの状態。
「こんばんは、やっと会えた。君が果歩ちゃんか」
そんな中、嬉しそうに笑顔を向けてくれたのは陽生の親友だという皆川秀さん。
医大時代の同期なんだって。
秀さんは人懐っこい笑顔が印象的な、陽生とはまた違った爽やかさを持つナチュラルなイケメン。
長すぎず短すぎないふんわりウエーブの髪がとても似合ってて、なぜかずっと私に会いたかったらしい。
……けど、
よりにもよって、陽生が連れて来たその人が、産婦人科の先生だというもんだから。
それを聞いた瞬間、後藤も私も思いっきり口に含んだ物を吐き出しそうになった。