「えっ……」
―――…別れる?
「それってどういう…」
そう聞きたかったのに、お兄さんはすでに背を向けて玄関から出て行ってしまった後だった。
……バタン。と冷え切った音が響き、目の前で重い扉が閉ざされていく。
……私の、ため?
そう、言った?
今さっき囁かれた左耳がほんのり熱い。
私は熱くなった耳を押さえ、ただ唖然とすることしかできなくて…
「果歩?」
そんな時、突然名前を呼ばれハッと私は肩を上げる。
何故か必要以上に胸がドクンと高鳴り、すぐに振りかえれない自分がいた。
「兄貴帰ったのか」
ゆっくりと近づいてくる陽生の足音。
ポンッと肩を叩かれて、ようやくそこで私は後ろに振りかえることができた。