「ま、でもそうなったとしたら、私の方は好都合なんですけどね。一応これ宣戦布告みたいになっちゃいましたけど、そう受け取ってもらって構いませんから」
「………」
「それじゃあ、本当にこれで」
“失礼します”
最後に満面の笑みで微笑んだミサさんが颯爽と車へと戻って行く。
もう、何も言葉が出てこなかった。
というより、今この状態に置かれている自分の状況すら整理できなかった。
「―――」
あれ、何だろう……
胸がズキズキとする。
いつの間にか遠のいでいく黒のベンツに目を向けながら、胸の締めつけがずしりと重く響いていくのに気付く。
どうしよう、しかも悔しい。
ものすごく悔しい。
それは自分の不甲斐なさに?
ううん、このやり取りの中何一つ言い返すことができなかった自分に、たまらず胸元を握りしめる。



