「しっかし、しばらく会わないうちにずいぶんと柔らかい雰囲気になったもんだな」
「えっ…」
「この部屋も昔とはまるで見違えるようだ」
意味深に部屋を見渡したお兄さんが、ゆっくりと私に視線を向ける。
「一緒に暮らしてるんだよね?」
「えっ、あ、はい…」
じっと見つめられて思わずドキっとしてしまう。
陽生より、どこか冷たそうな色を宿したクールな瞳。
それに、こうして向かい合って見ると、少し陽生より背が高いことに気づく。
肩幅もお兄さんの方が少しガッチリしてる、かな。
「へ~そう、あの陽生がね……」
少し以外そうな顔をしたお兄さんが何故かフッと顔を緩め、一歩私に近づいてくる。
そして何を思ったのか、突然私の耳元に顔を寄せて――
「でも、一つだけ忠告していい?」
「……へっ?」
「悪いことはいわない、できるなら1日も早く別れた方がいいよ」
………えっ?
「全て君のためだ。傷はなるべくなら浅い方がいいからね」
お兄さんは最後にもう一度笑い、ゆっくりと私から離れていった。



