「あの……」


「でも安心して下さい。だからって無理矢理あなたから奪ったりはしませんから」


「えっ……」


「だって、見ている限りとてもじゃないけどそんなことできそうもないし」



クスッと笑ったミサさんがまた一歩距離を縮めてくる。


私はただそんな彼女を見つめたまま、無言の沈黙を向けるしかなくて……



「でもね、きっと時間の問題だと思うんです。例え私が手をくださなくたって、きっとあなたたちはダメになる。そんな気がするから」


「えっ……」



ダメに……なる?



「それってどういう……」


「だってあなたは何も持ってないから」


「はっ?」


「先生に何もできないでしょう?」



……何もできない?



その言葉の意味が分からなくて、思わず声を上げそうになった瞬間、それを遮るように突然後方から男の人の声がした。