別にやましいことなんて何一つない。


仕事専用の携帯ならもう一つあるし、むしろ頻繁にかかってくる神埼ミサからのメールと電話にうんざりしてたとこだ。



「果歩が管理してくれるなら、その方がよっぽど助かるよ」


「陽……」



目の前の瞳が戸惑いに揺れ、だけど次第に安心の色に変わっていく。


そんな様子に俺もつられるように柔らかな笑みを向けた。



「ふっ、どうする?こんなのでよかったらいつでもお前にやるよ」



どーせ、普段ほとんど果歩か静香としか連絡なんて取ってないんだ。


こんなことで果歩の不安を消してやれるなら、俺は迷わずこれを果歩に差し出すよ。




「ほら、どうぞ」



口を緩め、果歩の手に携帯を握らせると、慌てたように果歩が首を振った。



「い、いい!もう十分!なんか取り乱してごめん……」



そして我に返ったように起き上がり、渡した携帯をやんわりと返してくる。


その姿がやっぱり可愛くて、俺はその手を引き寄せそのまま強く抱き締めた。