ああ、そうか……
やっぱり気のせいなんかじゃないんだな。
目の前の果歩の異変に気付き、俺はそのまましがみ付く体を引き離そうとする。
「果歩顔上げろ」
「やだ……」
だけど、まるで抵抗するように胸元から頑なに顔を上げようとはしない。
俺は真顔になり姿勢を正す。
目の前の夏歩の頭を安心させるように撫でると、もう一度果歩の体を引き離そうとして……
「果歩」
「や、いいからこのまま続き……」
「してって言われてもなぁ……この状況、こんな気持ちでそんなことできるわけないだろ?」
言いくるめるように声を向ける。
その証拠に果歩の体はずっとひどく強張ったままで、とてもじゃないけどそんな行動に移せない。



