甘い体温②・後編・


それを親指でそっと拭いとる。



「俺だってもう手遅れだよ」


「陽……」



果歩のいない生活なんて、一人の人生なんて考えられない。


ましてや他の相手と一緒になるなんてこと…




「こんなに好きなのに、離れられるわけないだろ」



左手で果歩の後頭部をクシャクシャと撫で、顔を近づける。


ゆっくり額同士をくっつけると、果歩がビクついたように肩をすくませた。




「悪かった」



親父のこと、そして兄貴のこと、今までのことを全て謝ると目の前の表情がより酷く歪み、苦しそうな顔をした。



「ほんと……だよっ」



そして何かが弾けたように、ぎゅっと首にしがみついてくる。


その腕の強さに俺の鼓動もピークを迎え、震える後頭部を強く強く引き寄せた。