それを親指でそっと拭いとる。
「俺だってもう手遅れだよ」
「陽……」
果歩のいない生活なんて、一人の人生なんて考えられない。
ましてや他の相手と一緒になるなんてこと…
「こんなに好きなのに、離れられるわけないだろ」
左手で果歩の後頭部をクシャクシャと撫で、顔を近づける。
ゆっくり額同士をくっつけると、果歩がビクついたように肩をすくませた。
「悪かった」
親父のこと、そして兄貴のこと、今までのことを全て謝ると目の前の表情がより酷く歪み、苦しそうな顔をした。
「ほんと……だよっ」
そして何かが弾けたように、ぎゅっと首にしがみついてくる。
その腕の強さに俺の鼓動もピークを迎え、震える後頭部を強く強く引き寄せた。



