「……なんで……」



思わずギョッとすると、陽生の顔がよりいっそう鋭くなった。



てか、見てたの?


あの時私がお兄さんと話してたの知ってた……の?


衝撃な事実に思いっきり動揺した顔を浮かべる。


陽生もすぐに悟ったように視線を逸らしながら舌打ちをした。



「あの、くそ兄貴……」



その顔が本っ気で怒りに満ちていたから、ゾッと肩をすくませてしまう。


もう、次の言葉なんて、冷静な状態で話し合える雰囲気じゃなくなっていた。


再び陽生に至近距離で見つめられた時には、正直どうしたらいいのか頭がパニックだった。



「悪いけど、それなら尚更一人になんかさせない。絶対このまま連れて帰るから」


「陽……」


「こんな状態で離れたりなんかしたら、余計ややっこしいことになりかねない。それだけはごめんだ」



もう一度強引に私にシートベルトをした陽生が、運転席に戻ってエンジンをかける。



「とりあえず帰るぞ、話しはその後だ」



戸惑う私をよそに陽生は一気に車を発進させると、そのまま勢いよく駐車場を後にした。