「行かせない」
次の瞬間、少しだけ顔を離した陽生が上から私を見下ろした。
とても真剣な顔で、むしろ怖いと感じる表情だった。
「このまま一人でなんか帰さない」
いつになく苛立った声に目を見開いた私。
緊迫する空気の中、鋭い視線に固まると、陽生の右手がそっと頬に触れてくる。
「そんなに俺と居るのが嫌?」
「えっ」
「そんなに俺と一緒に居るのが嫌なのか?」
まるで私の心を見透かした言葉にさらに私の心臓が大きく跳ねる。
「ひょっとして、会場で兄貴に何か言われたとか?」
「えっ……」
「俺と別れろとか訳の分からないことでも吹き込まれたりした?」
はっきり言って驚いた。
どうしてそれを……