……なぜ?


一瞬キョトンとしてしまった私の横から、すかさずため息交じりの陽生の言葉が飛んできた。



「別にそんなことどうでもいいだろ。つーか、早く本題を言えって」



少し苛立った声だった。


あ、やっぱり機嫌悪い?


少し尖ったトーンに若干身構えながら横を見ると、向かいのお兄さんの視線もすぐに陽生に定まったようだった。


顔色は一切変わることなく、落ち着いた様子。


お兄さんはすぐに上着の内ポケットからあるものを取り出し、それを陽生に差し出した。



「再来週、お前も出席しろよ」



サラリ、簡潔に目の前に差しだされたのは、白色で真ん中に何か金色のロゴが入った封筒。



「リュクス、の創立10周年だ。椎名家全員強制参加。親父も遅くても今週末にはこっちに帰ってくる予定だから」



お兄さんはそれを机に置き、コーヒーに手をつける。


まるで会社の報告会議のように淡々とした言い方だった。