「いえ……私は別に……」



実はさっき車の中で静香さんが少しだけ教えてくれたんだ。


今、陽生に言い寄ってるやっかいな女の人の存在がいることを。


しかも今日エスコートをしなきゃいけない人がその人だってことも。


その話しを持ちかけられた時、陽生はずっと断ってたらしいんだけど、どうやらその人が陽生のお父さんと深い関係があるらしくて。

その女性もかなり強情だったらしく、今回だけしぶしぶに陽生も首を縦に振ったみたい。


というより、振るざるをおえなかったみたいだ。


本当はまだそれ以外にも何だか複雑な事情があるみたいだったけれど…



「あとの詳しいことは陽生から直接聞いた方がいいから」



って、言われちゃったもんだから、私もそれ以上は聞くのはやめた。


それに、今朝陽生もちゃんと説明してくれるって言ってたしね。




「よし、それじゃあ気を取り直して行きましょうか」


「……はい」



そんなこんなんで、パーティー会場に足を踏み入れた私。


ドアを開け、一歩前に出た瞬間、それは禁断な世界への危険な幕開けだったんだ。