「パスタ冷めるぞ……」


そんな時、ポツリ陽生から出た声にビクッと体を強張らせた私。


恐る恐る顔を上げると、半分冷めきったパスタをいたって冷静に巻き付けている陽生が目に飛び込んでくる。



「……」



そして流れる沈黙。


その、あまりに静かな普通さが非常に怖いのは私の気のせいなんだろうか?



「あ、あの……」


「俺のやつも食うか?」


「えっ?」


「うまいぞ」



そう言って、何故か今巻き付けたばかりの麺を差し出され、私は思わず瞳を見開く。



「ほら」



そのまま少し強引に口元に押し込まれて、パクッと一口食べた私だったけれど、



「しっかし、うちのお姫様は驚くほどモテモテなんだな」



フォークを差し込まれたままじっと見つめられて、う……と咄嗟にパスタを詰まらせそうになった私。



「それより、変な男とかにしつこく付きまとわれたりしてないよな?」



真剣に問いかけられて、フォークを加えたまま慌てて頷いた。



「本当に?つーか、俺があげた指輪ちゃんとしてる?」



陽生のもう片方の手が伸びてきて、そっと私の左手を持ち上げた。