「そっか、そうだったんだ」
「……悪い、でもまじで嫌なら遠慮なく言ってくれればいいから」
陽生がまた私の頬を撫でる。
らしくないその視線にちょっぴり戸惑いながらも
「クス、なに言ってるの?全然嫌なんかじゃないよ」
上から陽生の手を握り返し、優しく微笑みかけた。
確かに少し前の私だったらきっといい顔はしてなかったのかもしれない。
無条件で面倒くさいって思ってたと思うし……
でも、
「だって、椎名家の大事なイベントなんでしょ?」
「え?」
「陽生にとって、とても大事なことなんだよね?」
実際、それがどんなに大事な行事なのか分からない。
詳しいことなんてちっとも分からないけれど、それでも今の私にとっては
「少しでも陽生のためになるんなら、私はすごく嬉しいよ?」
「果歩…」
「私だってたまには陽生のために何かしたいんだよ。ただでさえ、いつも迷惑ばかりかけちゃってるし、それにほら、私ってばいつも頼ってばっかりじゃない。甘えてばっかりっていうか、だから……」



