でも、この時の私はちっとも気付いていなかった。
あまりに浮かれすぎて、あまりに幸せで。
私を抱きしめながら陽生がどんな思いでいたのかなんて、どんな気持ちで今日会いに来てくれてたなんて考えもしていなかった。
「じゃあ……そろそろ行くかな」
「……ん、気をつけてね」
最後にもう一度口づけあって離れた私達。
私を見送りながら、一瞬切ない顔をしたことにも気づきもしないなんて、本当、彼女失格だよね?
もし、この時陽生の変化に少しでも気付いてたなら、きっとあんなことにならなかったのかもしれないのにね。
ごめんね、陽生……