「鈴、どうしたんだよっ。」

走ったのか、息の荒い桐。

2人の気配しかない。

満は?尚は?

あの人は?

そう考えてる。

目蓋を閉じる私はどう見える?

ねぇ、湊。

ねぇ、桐。

私、怖いんだよ。

助けてよ?

真っ暗の世界の中、

湊の声と桐の声だけが私の希望だった。

「・・・・・・・・・・」

静寂の世界からは海の波が心地よく響く。

湊と桐の気配が近づいてきても、

何の反応も出来なかった。

「鈴、」

湊の声が切なさを帯びる。

それが違う胸の痛みとして重なる。

「苦しんか?」

桐の困った顔が安易に想像できた。

「・・・・・・・・・・」

世界に独りぼっちにされたら

きっと生きていけないんだろうね。

でもね、独りが怖いって思うよりも

傷つける存在の私が一番世界で怖いの。

「鈴、話聞いて?」

苦しそうな湊の話し方に自分まで

苦しくなる。

「・・・・・・・・・」

「俺の話聞いてくれる?」

「・・・・・・・・・・」

言葉の変わりに首を縦に振った。

それが今出来る唯一だった。

これ以上は、何も出来ない。

私には、自分から何かを話す

勇気すらないの。

自分の痛手を他の人に話す

ことがどんなことよりも怖い。