人を見た目で決めつける人で占めてる。

誰も内面から入って行こうとは思ってくれ

ないんだろうな。

どんなにいい人でも人は外見から入って行くから。

「私も外見で判断しちゃったことあるし、

人のこと言えないよ。」

「そうなのか?」

「うん、ねっ。」

湊をチラっと見る。

きょとんとする湊は覚えてないんだろうか?

「湊のことシカトしたもんね。

ほっといてとか言っちゃし。」

湊があまりにも整った顔してたし、

こんな人に声掛けられる覚えなかった。

私を面白がってるのかとも思った。

「湊にそんなこと言うヤツ見たこと

ねぇな。」

「振られたのか?」

満と桐が湊を茶化す。

「完敗かなって思ったんだよ。

鈴、ちっとも警戒解いてくれないし、

そんなに怖い顔してたかな?」

「怖い顔ってわけじゃないよ。

普通は知らない人について行っちゃ

駄目なんだから当たり前だったんだよ。」

湊ってたまに不思議なこと言う。

「着いてった鈴も危ないだろ。

湊が何するか分かったもんじゃないだろ。」

「直感だよ。あのままだったら死んでた

かもしれないもん。この人なら大丈夫

だって頭で分かったのかな。」

湊は人の心を溶かしてしまうような

温かさを持ってた。

だから、あの日あの時あの場所で

湊に出会えたことは私の人生を

180度変えたようなものなんだ。

もう前居たところに戻れる気がしない。

振り向くのも帰るのも前よりも湊が

居るところに帰りたいって思う。

猫って懐いたら戻って行くんだよ。