ネコ専務の小学校からの友人に、加藤
風堂(かとう・ふうどう)という三毛猫
がいる。
この名前は、加藤は本名だが、風堂は
ペンネームである。彼は詩人なのだ。

風堂が20代はじめに出した第一作の
詩集「キャットフード」は爆発的に売れ、
第二作の「フード病」も評判になって、
この2作品によって、彼の詩人としての
声価は確立した。

  
アンドロメダ、アンドロメダ、
アンドロメダを思いながらサイコロを
振ると・・
あん、ぞろ目だ


私はフィギュアスケートの選手に言いま
した
フィギュア(引き際)が肝心だよ


・・どうも詩というものは、こんなので
いいらしい?
ネコ専務には風堂の詩の良さはいまいち
分からないのだが、にもかかわらず、
2人はとても仲がいいのだった。

ある年、ネコ専務の誕生日に、風堂は
自作の短い詩をプレゼントしてくれた。


しづかさや 岩にしみ入る 専務の声


ネコ専務はありがとうと風堂に礼を述べ
ながら、ああ、いつかは私も、この友人
の詩の良さが理解できるレベルに達し
たいものだと思ったのであった。


             おしまい